« 日本昆布(株)[函館市] | トップページ | 北海製紙(株)[小樽市] »

1908年5月 5日 (火)

(株)北海道貯蓄銀行[札幌區]

貯蓄銀行臨時休業 帳簿整理の爲め

北海道貯蓄銀行は昨朝に至り突然帳簿整理の名に於て札幌本店に臨時休業の札を標示し同行を閉鎖すると同時に旭川、岩見澤、小樽、岩内、江差、松前、函館、壽都の各支店並瀧川、夕張、瀬棚、室蘭の各代理店をも閉して臨時休業するに至りたるが同行は資本金二十七万圓と稱するも實際の拂込株金は僅かに十七万圓に過ぎず然りと雖も其營業の範囲は中々廣大にして前記の如く全道樞要位置には支店及代理店等を有し其營業振溌溂なりし受け比較的信用を有し貯蓄銀行としては全國有数のものたり故に零砕なる貯蓄預金は昨年七月頃に於ては實に二百三十一万圓の多額に逹し其預金者は數万人の數となるが爲め万一の非常を警戒する爲め昨未明より札幌本店には札幌警察署より巡査二名詰切りたるも午前中は極めて平穏唯同行大株主等の往復するあるのみ午後に至り十數名同行前に一時集合せしを見受ける外何事もあらざりき

今同行が茲に至りたる原因に付き探究するに彼の流行病的取り付け等によりて來れる一時的現象あらずして一般經濟界沈哀の影響により貸付金の回收不可能なるに反し貯蓄其他の預金は滔々とただ流出する傾向あり底止する處なければ若し現在の儘__し置かれには將來の維持思束なしとし過日來數回重役會を開きし結果内部整理の爲め三週間の期限を以て昨日より斯く臨時休業を爲したるものゝ如し

然れども同銀行の資金急迫は單に經濟界の不況故に表れるものにあらずして其__に昨年八月の候江差報道員某は脅喝收財事員が世に暴露せらるゝや同社員は貯蓄銀行江差支店長の密告によりしものと邪推し同支店長を怨むの余其復讐として處説流言を爲し同支店に對し預金取付を教唆せしより同支店は僅かに取付けに遭ひ當時江差支店の預金額廿七万圓程ありし中十三万余圓の引出しに遭ひ爲に本店資金の融通上少なからざる影響を受けたるものゝ如とかりしが其瘡痍未だ癒えざる中經濟界は次第に非境となり昨年十一月頃に至り預金取扱事務は一層頻繁となり而して其引出し額は假に五圓引出しで再び預け入るゝ時は四圓に減額する割合となり何時も出し入れ毎に預金額を減少せらるゝの實況となり本年三月に至て預金引出し更に増加し同月中に引き出し額約二十万圓に及び同月末日の預金總額は約二百万八千余圓となりしに去る四月に至り益々甚しく同月の引出し額約三十万圓に逹し末日の預金總額は百七十万圓に減少す(其中本店扱六十七万九千圓あり)

然るに貸出し金は三月末日に於て百八十八万九千余圓は四月に入りて殆んど回收出來ざる爲め益々資金欠乏の窮状に立ち至り爲め磯谷頭取は道廳濱田事務官に其事情を具陳し救濟援助を嘆願する處ありし爲め道廳は再度區内各銀行重役を招喚して善後策を凝義し拓殖銀行より約八万圓の流用を行ひしも如斯姑息手段にては整理付かざるものと一決し遂に現状態に及びしものとなるが同行現在の營業一班を觀るに右の如く資本金は僅かに十七万圓の外借入金十九万五千圓なりと雖も貸付金額百八十八万九千圓あり有價証券及株券の所有するもの

整理公債一万八千圓、軍事公債六万二千圓、海軍公債三千九百圓、五分利公債千三百圓、特別五分利公債一万九千七百圓、國庫債劵十七万六百八圓、北海道銀行株六千六百圓、共成株一万七千二百圓、札幌倉庫株二千圓、大日本麥酒株八千八百圓、其他権利株六千余株、札幌製粉株二万二千圓、札幌工作株二千五百圓、北海道炭鑛株九十圓、日本勸業株五百六十圓、京釜製造株三百圓、勸業債劵二千百七十圓、拓銀債劵二千二百圓、麥酒會社公債千五百圓、小樽保險株三百七十七圓、南滿鐵道株二十圓

等あり然れば今俄かに貸付金全部回收せずとしても漸次其回收期來るは疑なかるべく殊に前記百七十万圓の預金中五十圓未滿の小口預金者は約四万人にして此の金額七十余万圓に過ぎず而して此の貯蓄預金者は優先權を有するを以て貯蓄預金者に對して損失を掛くる等の如き事なかるべし

目下道廳始め各銀行等にても救濟凝義中なるが貯蓄銀行は來る十三四日頃臨時株主總會を開きて善後策を決定する筈なれど關係者等も沈靜の態度を以て之に對する方財界神經過後の今日に於て特に得策ならんと云

北海タイムス
1908/05/06
http://www.hokkaido-np.co.jp/

« 日本昆布(株)[函館市] | トップページ | 北海製紙(株)[小樽市] »

0000 札幌市」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1345999/46965331

この記事へのトラックバック一覧です: (株)北海道貯蓄銀行[札幌區]:

« 日本昆布(株)[函館市] | トップページ | 北海製紙(株)[小樽市] »